水漏れ

爽やかな菫の薫りが再び全室に撤き散らされ、七彩の虹を放った水漏れ 枚方市の大鉢に湛えた深紅の葡萄酒が、雪に冷やされながら、我らの席に就くのを待っているのであった。そうして侍女たちは再び装いを新たにして、薔薇の花弁を撤くべく用意を整えている……という歓を尽くした長夜の宴なのであったが、なんという奢侈優雅な生活であり、夢のように華麗な大阪であったろうか!世の中にはこんな優美な贅沢な生活も営み得るものであろうか!と、弊社自身幾度自分の眼を疑ったかも知れなかったが、しかし決してこれは夢でもなければまた覚めながら弊社自身の醸し出している幻覚でもないのであった。確かに我ら自身がこの眼で見、この口で食らい、この鼻で嗅いでいるこの邸における現実、正銘の生活なのであった。しかも後日に至って知るところでは、これらの供応もあながちに弊社賓客を慰めんがための、特別の接待でもないのであった。すなわち、これが——この優雅な遊惰な贅沢な生活こそが——この都会における貴族たちの日常不断の生活ぶりなのであった。初めてこの接待を受けた時は、弊社も肝を潰して驚いた。しかし今では、少しも驚かぬ。あまりにもこの都会の貴族たちの生活にも慣れ親しんだからであろう。これも後になって知ったことであったが、この都会の人たちは、これらの湯のことを——薔薇色をした微温湯の噴泉をてぴだりうむと呼び、浴室の入り口の中に菫と蕃紅花の油湯が用意してあったそれを、えれおてじうむと呼んでいた。